2012/01/02

「靴がないんです」



 2011年という1年のあいだに数多くの人と話したが、今もしっかりと頭に残っている言葉はこれだけかもしれない。
  宮城県に住む、幼いお子さんを持つ女性の言葉だ。


 衝撃的だった。
 僕自身が同じ立場だったら、同じように思うはずだ。自分は地面を裸足で歩き、怪我をしたって構わない。
 しかし、自分の子供にはそんなことをさせたくない。裸足で町を歩く子供をこれ以上、見ていられない。
 だが、どこに行っても靴などない。サンダルやビーチサンダルの類であっても手に入らない。
 そんな母親の気持ちを思うと今も涙が出てくる。


 「気に入らなかったら捨てちゃってくださいね」

 そんな言葉しか言えなかった自分が情けないが、靴を渡した1週間後にお母さんからメールを頂いた。

 「頂いた靴を履いて、元気に学校へ行っています」

 涙が出た。ほっとした。
 靴を履いてランドセルを背負って学校へ行く背中が思い浮かんだ。


外出するから玄関で靴を履く。
生まれたときから当たり前に繰り返してきた行為が、当たり前ではなくなる瞬間。
背中が色々なものを教えてくれた。

お子さんにしてみれば、数ある困難の一つが解決されただけのこと。
僕がお子さんに何かをできたとは思っていないが、僕自身はたくさんのものを教わった。
当たり前。それがいかに大切なことなのか教わった。


 「何もお構いできませんが、またいつか遊びに来てください」

 お母さんが言ってくれた言葉。
 基本的に約束は守らないし、口約束は受け流す僕だけど、この人生において、絶対に破ってはいけない約束ができた瞬間。
 必ず、遊びに行きます。

 2012年。
 数百キロ北で暮らす男の子が無事に新年を迎えていることを祈りながら歳を越した。
 他人のことを考えながら過ごした初めてのお正月。


 僕はたいした人間じゃない。何ができるわけでもない。金も権力もない。
 でも、困ったことがあれば、こんなおじさんでよければ、いつでも何でも言ってきてほしい。
 キミは一人じゃないから。


 お正月。クリスマス。お餅。イルミネーション。
 当たり前の光景すべてが、嬉しくてたまらない今日この頃。


ホッとする。
新年という言葉が今年もあることにホッとする。
来年もあるといいなと祈りつつ、今年も一年頑張ります。よろしくお願いします。